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地方講演での提言:地元の当事者を使うべきという主張と、その結果

リカバリーを社会全体に広げ、当事者参画を文化として定着させるためには、一握りの目立つ当事者だけでなく、全国各地の当事者が発言する機会を確保することが重要であるという戦略的な提言が、筆者は行ってきました。


筆者は30年ほど前から、地方の家族会、行政、マスコミなどから日本各地に呼ばれ、人前で話をしてきました。


その場で質疑応答の最後の時間に、筆者は必ず次のように返答してきました。


「私はもうここには来ません、次からは地元の当事者を使ってください」。


この提言の背景には、「いつまでたっても新しい世代が育たない」という問題意識があります。


当事者の中から、使いやすい目立つ人ばかり使われるのでは、当事者参画の文化が根付きません。


筆者は、その地域にはその地域の当事者が必ずいるはずなので、「もうここには来ません」と言って帰るのが「僕の仕事」だと思っていた時期がありました。


筆者は、自らをロールモデルではなく、「おそらく、道を拓いてはいなくなり、後から入った人がきちんと仕事する」ような役割だと考えています。


筆者ではない、他の当事者にはしゃべる素養も前に出る素養もあるが、ただ出てこなかっただけであり、全国には無数の当事者がいるのに、それに気づかない専門家が多いと感じていたのです。


この提言は、当事者の権利の底上げを狙った活動の一つであり、地元の当事者こそがその地域の財産であり、壇上で発表する方として、最もふさわしい方であるという信念に基づいています。


3.2 提言の結果と当事者参画の実現


筆者が地方講演でこの主張を続けた結果、本当に地方から呼ばれなくなり、地元の当事者の方が呼ばれるようになったという成果が得られました。


この変化は、当事者の時代が徐々に実現しつつあることの証左です。


30年前には、当事者活動は学術集会では完全に無視されるか、「当事者ごときが何を言う」と攻撃されることばかりでしたが、現在では、各地で多くの当事者の方が発言するようになっています。


当事者参画が文化として成立し始めたとはいえ、依然として課題は残ります。学会のシンポジウムでは、専門家の発表が一通り終わった後に「じゃあ当事者の方はどういう感想を持ちましたか?」という立場で参加することが多く、当事者は「なぜ最後に一言だけなのだろうか」という疑問を抱いています。


この構造的な課題に対し、筆者は「地元の当事者・家族の方とその支援者をセットで数名入れたほうがいい」と提言します。


これは、地方での提言と同様に、一元的な当事者像ではなく、地域に根ざした多様な当事者を参画させることの重要性を示しています。


3.3 経済的価値の向上を目指した戦略

筆者は、当事者の発言が軽視される風潮を変えるため、当事者に対する敬意として、謝礼金や賃金の底上げを目的とした戦略も実行しています。


メンタルヘルス村の中で、「私の講演は一回10万からです」などとうそぶくことで、他の当事者の人たちのお金が上がらないかなあと思っていたのです。


この結果、「誰からも呼ばれなくなったので、疲れなくて良いと思う」という半ば皮肉的な結果になっってきました。


これは、当事者の発言の経済的な価値を市場に提示し、その社会的評価を向上させようとする、戦略的な試みでした。


リカバリーは、当事者が自分で決めて、自分で責任を取り、荒波の中で生きることに等しいのです。


この自立した生活を維持するためには、福祉サービスを利用して家庭生活のエネルギーを省エネ化するなどの工夫が必要ですが、その活動の基盤を確保するためにも、当事者の発言の社会的・経済的な価値を適正に評価する、水平な関係性が必要なのです。


ピアサポートは、精神障害を持つ当事者にとって、孤立からの脱却とリカバリー(主体性の再獲得)に最も影響を与えるターニングポイントです。


この極めて個人的かつ対等な関係に基づく活動を、公的な精神保健福祉システムの中に位置づけ、職業化しようとする試みが「ピアスタッフ制度化」です。


しかし、この制度化の裏側では、当事者の経験知が正当に評価されない構造的な課題や、当事者の主体性が組織によって再び奪われるという、深刻なトークニズムの罠が潜んでいました。





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