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11月 8, 2025の投稿を表示しています

#アンチスティグマ 活動の妨害と「 #トークニズム の罠」

  アンチスティグマ活動の妨害と「トークニズムの罠」 ある当事者が自ら発言し、社会的な変革を促そうとする際、その力を削ぎ落とすメカニズムが、特に専門職や行政、そしてシステムの中で働く他の当事者(当事者サービス提供者)自身を介して働きます。 5.1 リカバリーを封じる最大のバリア アンチスティグマとリカバリーの最大のバリアは、リカバリーの最中にいる当事者の口を封じること、すなわち自由な言動や語りを封じられることです。 ピアスタッフ(当事者サービス提供者)の一部が、所属している組織を辞職し、フリーランスとして働くことを宣言した最大の理由も、「この組織にいると自由な発言ができない」というものでした。 組 織に圧力をかけられ、発言内容を自分の意図ではなく所属組織に合わせ、嘘をつくことは、当事者として最悪の経験であり、人生においてしてはいけないことであるとされています。 リカバリー志向でない組織では、リカバリーの最中にいる当事者の発言が、同僚や雇用主の立場からの忖度によって口を封じられることで、各地域の当事者によるアンチスティグマの継続的で地味な努力はいったん終止符を打たれます。 5.2 トークニズムの罠と「ショーケースに入った当事者」 当事者参画が広く行き渡るにつれ、行政の委員会や学会など、いろいろな場に、言い訳として当事者の椅子が一つだけ用意される慣習が生まれました。 これを海外の当事者の仲間は一言で「トークニズム!」と言い放ちました。 トークニズム(Tokenism)とは、形式的かつ機械的な当事者参画であり、当事者はゲームセンターのコイン(トークン)と同じような価値でしか扱われないことを意味します。 これは、「あなたは発言してもいいです、でも意見は聞きいれません」という態度を示すもので、この罠にはまった当事者は「ショーケースに入った当事者」と呼ばれ、屈辱的な思いをします。 筆者は、自ら「トークニズムの罠に足を突っ込んでみた」経験があります。 悲観、絶望、無力、恐怖を感じながらも、次に続くほかの当事者が発言をするときの準備となるよう、あえて「ショーケースに入った当事者」という自覚を持ちつつ、参加し続けてきたのです。 学術集会における当事者の扱いの具体例として、シンポジウムで、「ばーっと専門家たちの発表があって、一通り終わったあと、『では、当事者の方はどういう感想を...

#教育現場 への #当事者参画 が抱える #希望 と #懸念

  教育現場への当事者参画が抱える希望と懸念 アンチスティグマの具体的な実践の場として、学校教育や大学教育の現場への当事者参画は重要ですが、そこには複数の課題と危険性が存在します。 4.1 教育現場でのスティグマ継承の危険性 カリキュラムとして、義務教育や高等学校での精神保健教育が始まるとき、精神疾患の発病=悪となる可能性があります。 当事者としての経験から、精神疾患について「保健的な知識を身につけ、精神疾患にならないようにしましょう、精神疾患になったら病院へ」というだけの教育では、再発=悪の文化を感じる伝統的な精神科医療を経験してきた身としては、精神疾患の発病=悪となるのではないかという強い懸念を持たざるを得ません。 なぜなら、予防と回復の知識を身につければ予防できるかというそもそもの問題があるにせよ、それを無視したとしても、アンチスティグマの教育も並列するべきだからです。 アンチスティグマの教育がなければ、大人から子供へのスティグマの継承が起こり、精神疾患になった人が隣に住んでいるとしても、運が悪い人と思うだけの人が育ってしまう可能性があります。 実際に当事者としての筆者は発病当時、大学の図書館で精神疾患についての教科書を読んだ際、学べば学ぶほど絶望した経験があり、もし今の時代に予防教育を受けた上で発病したとしても、「自分の人生のキャリアが終わった」と感じる可能性が高いのです。 4.2 専門職教育における偏見 看護やソーシャルワークを目指す大学生でさえ、筆者がゲストスピーカーをとして話をした際に、フィードバックシートに「目の前に来たので危険を感じた」という旨を書いたことが報告されています。 筆者は、「当然だろうと思った」と記録しています。 この経験は、専門職を目指す若い人々でさえ、精神障害者に対して根深い偏見を持っている現実を示しています。 当事者が教育に参画することは理想です。しかし話し手としての当事者本人にとってはかなりの負担であり、またその場にいる大人の拒否反応も必ずあると覚悟すべきです。 それでも、当事者が参画することで、もし一人でも目の前にいる学生の考え方が変わりうることは、大きな価値があるのです。 【最後までお読みいただきありがとうございます。 もしよければ、アンケートにお答えいただけますと幸いです。】 https://forms.gle/z...

#アンチスティグマ の戦略と #リカバリー の両輪関係

アンチスティグマの戦略とリカバリーの両輪関係 スティグマを解消し、当事者の主体性を回復させる活動は、リカバリーの旅そのものと不可分な関係にあります。 3.1 リカバリーとアンチスティグマは「自転車のペダルと車輪の関係」 当事者としての結論として、「リカバリーの過程にいる当事者が増えれば増えるほど、世の中からスティグマは減り、世の中のスティグマが減れば減るほどリカバリーの過程に入り込む当事者が増えていく」という関係性が述べられています。アンチスティグマとリカバリーは、例えて言えば互いに自転車のペダルと車輪の関係にあり、どちらかが回ればもう片方も回る車の両輪です。 リカバリーは、リカバリーストーリーの語りを聞くことや、ロールモデルとなる当事者の生きる姿勢から感染するとされています。一旦リカバリーに感染すると、どんなに病気が悪くても、どんなに社会的な指標や回復の指標が低くても、人間としての普通の苦労をし続けるしかなくなるのです。 3.2 アンチスティグマのための三原則 国際的なアンチスティグマ活動では、スティグマをなくすための具体的な戦略が共有されています。 1. プロテスト(抗議):差別的な言動に対して異議を唱えること。 2. 教育:精神疾患や回復について正しい知識を伝えること。 3. 実際に会うこと(直接接触体験):精神障害を持つ当事者と直接出会い、話を聞くこと。 特に「実際に会うこと」は、偏見を解消する上で最も力があるとされています。 リカバリー全国フォーラムの最大の価値は、立場を超えた完全に水平な関係性を参加者全員に約束し、維持し続けていることにあり、当事者との直接接触によって、目を覚ます専門職が多く見受けられる場となっています。 リカバリー全国フォーラムでは、参加する動機が「誰か」に「直接」「会い」に行き、立場を超えて「触れ合う」ことです。 この直接接触体験の提供は、学校現場で言えば教諭や管理者、事務員なども、精神疾患を持つ当事者に直接接触することで、大人から子供へのスティグマの継承を起こさないという目的も持っています。 3.3 経験の語りが持つ「エビデンス」としての価値 当事者がアンチスティグマのために何を話すべきかという問いに対し、カーメン・リーは「just your story!」と答えています。 当事者が人前でアンチスティグマのために話をすることは、経験...