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12月 9, 2025の投稿を表示しています

#ピアサポート 論

ピアサポート論 序論:リカバリーの覚醒におけるピアサポートの位置づけ 筆者ら精神障害者がリカバリーの道を歩み始めるにあたり、克服すべきは病気の症状ではありません。 むしろ、自分で判断することをやめさせられ、主体性(決定と責任)を放棄してしまった状態からの脱却こそが、リカバリーの核心です。 それはもはやリカバリーなどという趣旨の不明な言葉ではなく率直に精神障害における回復とよんでも良いものです。 世界中の当事者同士で認められているリカバリーの最小限の4原則には、この主体性の回復と並んで「ピアサポート」が挙げられています。 3. ピアサポートとは人を助けることなのだろうか。 ピアサポートとは、仲間や同じような体験をした人たち同士の支え合いを指します。 このピアサポートが、リカバリーの旅において、単なる付加的な支え合いではなく、最も影響を与えるターニングポイントとなることが、筆者ら当事者自身の経験から強く示されています。 筆者が、日米精神障害者交流プログラムにおいて、リカバリーの過程にある当事者から集められた30以上のターニングポイントに関する応募資料を分析した結果、その中で最も多かったのは「人との出会い」でした。 この「人との出会い」こそが、ピアサポートの持つ力であり、当事者が自らの語りを内発的に伝えたいという欲求を呼び覚ます起点となるのです。 リカバリーを可能にするには、孤立を打破し、対等な立場で互いの経験を分かち合い、承認し合う、ピアサポートの機能と規範の確立が不可欠となります。 1. ピアの必要性:孤立からの脱却に薬は全く役に立たず、ピアサポートが決定的に必要である リカバリーの実現を阻む最大の要因の一つは、孤立です。 筆者ら当事者の視点から見ると、この孤立の問題こそが、薬物療法では解決しえない、最も根深い困難であると認識されています。 1.1 精神障害者が直面する最大の難題としての孤立 精神的な困難を抱えてアジアで暮らすということは、家族に守られることで、欧米のようにホームレスにはならないかもしれませんが、社会から孤立する点では一緒です。 孤立こそが私たち精神障害者とその家族にとって、生きていく上で最も困難なことです。 筆者ら当事者が自らリカバリーの道を選ぶには、まずこの孤立した状態から抜け出すことが、決定的に必要です。 孤立から抜け出すことで、当事者は「同じ病...

#国境 を超えた #ピア との連携と #水平な交流 の意義

【コラム】国境を超えたピアとの連携と水平な交流の意義 ピアサポートの概念は、1990年代後半からの筆者が日本側の代表を務めた日米交流プログラムを通じて、日本に大きな影響を与えました。 4.1 ロサンゼルス「プロジェクト・リターン」からの学び 1997年、筆者はカリフォルニア州ロングビーチの精神障害者社会復帰施設「The Village」を見学しました。そこで出会ったのが、セルフヘルプグループ「プロジェクト・リターン;ザ・ネクスト・ステップ(PR;TNS)」のメンバーです。 ここで筆者が出会った当事者たちは日本とは全く違う様子で、とても元気であり、隠れて暮らすのではなく、どんどん社会に関わって生きていこうとしていました。 彼らは全員、1997年当時、自分の病名と、現在飲んでいる薬についてきちんと知っており、効果や副作用についても医療従事者から教えられていました。 1997年当時の自分の病名さえ知らない日本人とはずいぶん違うという事実は、非常にショッキングでした。 Village ISAでは、当事者が運営するレストランや銀行などがあり、職員とメンバーの関係は「助ける者と助けられる者」といった上下関係ではなく、互いの尊敬と平等の精神の上に成り立っています。 職員は治療者・セラピストというよりむしろ「コーチ」であり、メンバーが社会生活上の責任を伴う決定をするときに傍で見守りながらサポートします。 また、メンバーが金銭管理を学べるように「ヴィレッジ銀行」を運営し、自分で貯金やローンの決定ができるように成長を促します。 PR;TNSのメンバーであるビル・コンプトン氏と筆者は深い交流があり、彼は筆者にとって「人生についてなにもかも教わった人」でした。 この国際交流は、日本における精神保健改革の架け橋となり、当事者のエンパワーメントと回復のセミナー開催、および米国の回復者の生活体験を日本に持ち帰る機会となりました。 4.2 国際移動と信頼の重要性 当事者が国境を越える際には、スティグマと薬物管理の問題に直面します。 2003年WFMHメルボルン大会への参加時、筆者は検疫が厳しいと聞いて、薬を取り上げられるのではないかと「びびっていた」と述べています。 筆者が正直に「薬を所持している。うつ病のための薬です」と申告したのに対し、同行したビル氏は、薬の質問に「精神の危機のための薬です」と...