投稿

#ピアスタッフ制度化 の歴史と #トークニズム の罠

ピアスタッフ制度化の歴史とトークニズムの罠 ピアサポートを組織的に取り入れるピアスタッフの雇用は、リカバリー志向のサービスへの転換の象徴ですが、その導入過程では当事者の尊厳を脅かす構造的な課題が伴いました。 3.1 ピアサポートガイドライン翻訳と制度化の胎動 ピアサポートに対する注目が本格的に集まり始めたのは2011年頃です。 筆者がWFMH大会(世界精神保健連盟)などに海外に赴いていた時期と重なります。 当時、筆者の参加した グループでは、アメリカのピアサポート・スペシャリスト・ガイドライン第4版の翻訳を試みることになりました。 筆者はガイドラインの第4版を1年かけて訳しましたが、400ページ近い内容を40ページ程度の冊子にまとめるよう求められるなど、初期の制度化の試みは困難を伴いました。 この翻訳作業は、日本のピアサポートの制度化や資格化を狙っていた時期の活動の一つであり、後の 日本メンタルヘルスピアサポート専門員研修機構 (一般社団法人)の立ち上げへと繋がります。 日本メンタルヘルスピアサポート専門員研修機構 は、研究費がなくなるタイミングで独立採算制をとりいれ、一般社団法人となりました。 3.2 ピアスタッフが直面する「トークニズムの罠」 ピアサポートの制度化が進む中で、当事者サービス提供者(ピアスタッフ)は、学術集会や行政、所属組織において、トークニズムの罠に直面します。 トークニズムとは、当事者参画が形式的かつ機械的に行われることです。 委員会などに「言い訳として一つだけ当事者の椅子を用意する」という慣習であり、当事者はゲームセンターのコイン(トークン)と同じような価値でしか扱われないという屈辱的な体験をします。 この罠にはまった当事者は「ショーケースに入った当事者」と呼ばれます。 この罠の最大の危険性は、当事者の自由な発言を封じることです。 リカバリーの最中にいる当事者は、所属組織に圧力をかけられ、そのために発言の内容を自分の意図ではなく、所属組織に合わせ、嘘をつくことになることは、当事者として最悪の経験であり、人生においてしては、あってはいけないことだと筆者は強く主張します。 リカバリー志向でない組織に所属するピアスタッフが、組織内の忖度により口を封じられることは、アンチスティグマ運動の最大のバリアとなります。 しかし、筆者は、自らあえてトークニズム...

#水平な関係性 の実現:リカバリー全国フォーラムとコ・プロダクション

水平な関係性の実現:リカバリー全国フォーラムとコ・プロダクション ピアサポートを精神保健システム全体に広げるには、専門職と当事者の間に存在するヒエラルキーを打破し、水平な関係性を構築することが不可欠です。 2.1 リカバリー全国フォーラム:対等な関係を維持する場 NPO法人コンボが主催するリカバリー全国フォーラムは、この水平な関係性を実現するための象徴的な場です。 2009年に始まったこの大会は、いわば「リカバリーの祭典」とも呼べるもので、参加者の立場(当事者、家族、専門家、市民、マスコミなど)がすべて対等な立場であり、普段のおかしなヒエラルキーから脱出する場となりました。 フォーラムの会場では、「〇〇先生」という呼称は禁止とされ、全員が「〇〇さん」と呼び合うことになっています。これは、当事者との直接接触によって、専門職が目を覚ます場となり、参加者が「こんなことをしている人もいるのだ」「こんなこともしてもいいのだ」と変わり帰っていく機会を提供しています。 この大会の魅力の一つは、「誰か」に「直接」「会い」に行き、立場を超えて「触れ合う」、こと(それも物理的に)、が参加の動機となる点にあります。フォーラム終了後も、この水平な関係性は継続し、どんな立場であろうが、あだ名やさん付けで呼び合う文化が根付いています。 特に、2013年からはトークライブの形式が固まり、約40人〜50人くらいの人が、1,200人の会場に向かって、マイク一本で2〜3分ずつ自由に発言をするようになりました。 これは、当事者が勇気をもって壇上に上がり、発信し続けるという非常に自由な雰囲気の場となっています。 2.2 コ・プロダクション(共同創造)の哲学 専門職と当事者が対等なパートナーシップを築き、サービスや政策を共同で作り上げていくことをコ・プロダクション(共同創造)と呼びます。 この共同創造を理解するための鍵は、「目的」と「手段」のすり合わせにあります。 コ・プロダクションとは、この目的と手段の側面をどうすり合わせ、互いにハッピーになっていくか、という作業です。 水平な関係性の実現には課題もあります。 専門職が「治療者」と「患者」という関係にある診察室の中では、当事者や家族の本音はわからないため、フラットな関係を築くことは無理だと考えられます。 ロサンゼルスの統合サービスエージェンシーのVilla...

#ピアサポート の核心: #リカバリー の #ターニングポイント と #孤立の克服

ピアサポートの核心:リカバリーのターニングポイントと孤立の克服 リカバリーの過程において、当事者が主体性を取り戻す上で、ピアサポート(当事者同士の支え合い)は決定的に重要な役割を果たします。これは、リカバリーの最小限の4原則の一つに数えられています(決定すること、責任を取ること、ピアサポート、ものの見方が変わること)。 1.1 孤立への特効薬としてのピアサポート 筆者ら、精神障害者にとって、生きる上で最も困難なことは孤立です。 精神的な困難を抱えてアジアで暮らすことは、家族に守られることが多いため、当事者が地域で過去のヨーロッパ、北アメリカのようにホームレスにはならないとしても、社会から孤立する点ではアジアもヨーロッパ、北アメリカ、アフリカ大陸、オーストラリアでも、すべて一緒です。 そして、この孤立に関して薬は全く役に立ちません。薬が効く部分ではないのです。 リカバリーにおける決定的に必要なことは、この孤立した状態から抜け出すことです。 ピアサポートは、孤立を打破し、当事者がリカバリーの過程に入り込む最も影響を与えるターニングポイントとなります。 実際に、ピア・サポート・グループに参加した途端、アクティビティが上がり、リカバリーしていった仲間が何人もいます。 1.2 ピアサポートの本質:「シェア」と共感 ピアサポートは、ヘルパー原理や「助けられる者と助ける者」という上下関係に基づくものではありません。 ピアサポートは、ギブ・アンド・テイクでは決して成立しない関係性であり、その本質は「シェア(分かち合い)」にあります。 ピアとは、共に自分の足で立っている人々を指し、自らのストーリーを互いに認め合い、シェアすることによって成立します。 私はリカバリーストーリーを集めたことがありいます。 日米精神障害者交流プログラムで、は日本側のメンバーを公募する際、あなたのリカバリーのターニングポイントは?という作文を寄せてもらっていました。 リカバリーストーリーを寄せてくれる当事者たちは、自分の語りを内発的に伝えたくなった人ばかりであり、彼らに共通することで一番大きかったのは、人との出会いでした。 ピアサポートは、同じ体験をした人、共感できる人同士の関係であり、同情とは異なります。 周りの人の同情は、自分が情けない気持ちになるばかりで何の結果も出しませんが、結果を出せるのは共感できる...

#自分は正しい #世界が間違っている という感覚 #世界とのつながり と #ピアサポート

コロナ禍における「自分は正しい、世界が間違っている」感覚 デジタル時代における孤立と不安は、新型コロナウイルスの流行という未曾有の事態によって、さらに深刻化しました。 筆者の当時の経験からいえることは、孤立は当事者が抱える特有の不安や妄想を増幅させました。 新型コロナウイルスの流行に伴い、「○○の種類のものがほとんどの店の店頭からなくなっている。しかし、あそこの店には売っている」という情報を見つけたり、筆者自身は、なにか行動をしないと近いうちに家族が死ぬのではないかという、強い不安の中で過ごす日々が始まりました。 統合失調感情障害を持つ筆者にとって、このような感染症の流行に伴う、閉鎖、他者への疑惑、不安、孤立、そして自らが物理的距離を取り、他者からは避けらているかのように、物理的距離を取られている状況においては、むしろ統合失調症の症状のようなものが、発症する直前の状況を思い出すような状態となりました。 統合失調症を発症して以来、コロナ禍以前は、日常から「自分が正しい、世界が間違っている」「自分については疑いがない、一方、世界のすべてを疑っている」ことに気がつくと、そのときには統合失調症の症状が出ているものとして行動を修正し、気をつけて生活してきました。 しかし、コロナ禍においては、この「自分は正しい、世界がおかしい」という感覚は、筆者だけではなく、だれにとっても、環境として作られてしまっているという状況に気づいたのです。 一方で、継続する強いストレスに晒された一般の人々は、うつ病という、わかりやすく重症ではなさそうな、診断名を付けたくなる傾向がありました。 そこから様々なことをインターネットで調べては、派生することを自分に当てはめ安心し、「コロナうつ」という造語に頼ることで、落ち着きのいい不安を手に入れようとしていました 。 身体の疾患での緊急入院と妄想の増幅 新型コロナウイルスの流行下、筆者は腸閉塞になり、自宅近隣の外科病棟へ緊急入院しました。 入院中は絶飲食となり、精神科の薬が飲めなくなった時期がありました。 入院初日、防護服を着る練習をしているナースを見た後、すぐに妄想が始まりました、「自分はここから生きては帰れない、新型コロナウイルスで死ぬのだ」と思い込みました。 入院1~3日目になると、親しい人や家族に電話をかけまくり、点滴に毒を盛られ、医療従事者に殺され...

#ウェブ解析 による #孤立 の #可視化 :「 #オーバードーズ 」を #検索 する人々の実態と時間帯

ウェブ解析による孤立の可視化:「オーバードーズ」を検索する人々の実態と時間帯 精神障害を抱える人々にとって、最大の困難の一つは、社会からの孤立です。 回復の道筋は、この孤立した状態から抜け出すことによって決定的に加速されます。 しかし、現代の社会において、この孤立は物理的な断絶に留まらず、デジタル空間における切実な声として現れることがあります。 筆者は、NPO法人地域精神保健福祉機構・コンボのホームページのアクセス解析の仕事を担当しており、解析の手法により、様々な気づきを得ています。 ウェブ解析は、これまで見えなかった世の中の事柄が浮かび上がってくる場となることがあります。 絶望的な検索キーワードの増加 ある時期、NPOコンボのウェブサイトへのアクセスにおいて、検索キーワードに大きな変化が現れました。 それまではほとんど見られなかった、キーワードでのアクセスが例年、7月後半から8月に入り急増したのです。 オーバードーズ+〇〇 2023年、7月から8月にかけての「オーバードーズ+〇〇」という検索キーワードの急増は、ウェブ解析の作業を一時的に止め、「この人たちになにか手を差し伸べられないものだろうか。どのような思いなんだろうか、大丈夫なんだろうか」と深く心を痛め、心配する原因となりました。 検索する人々の実態と時間帯の把握 そこでさらに解析を進めた結果、これらのキーワードでアクセスしてくる人々の具体的な行動パターンが浮かび上がってきました。 アクセスした時間帯を見てみると、例えば、毎日のように午後9時から午前1時にアクセスしている方がいました。 また、別の人は昼の12時にアクセスし、夜10時にアクセスしていました。 これらの人々は、コンボのウェブサイトにオーバードーズを検索して何度もアクセスしています。 この現象から得られた最も重要な事実は、オーバードーズを検索してコンボのホームページに来たとしても、「その人はまだ生きているのだ」と、生き延びてくれていることを確認する作業となったのです。 孤立の中で生きる力を探す人々 オーバードーズや自傷行為は、周りからはとても驚かれ、やめてほしいと思われる行為です。 筆者もできればしないでほしいと思っています。 しかし、オーバードーズを検索し、この記事にたどりついて読んでくれた人は、生き残るために行っているのだろうと筆者は思います。 ...